アメリカ国債の利回り、金利とは？フィッチによる米国債の格下げの影響は？
作成日: 2023年08月06日
更新日: 2023年08月06日
アメリカ10年債利回りの動向とアメリカ経済への影響
アメリカ10年債利回り（US10Y）とは、ある時点で10年間返済期間が満了するまでに毎年受け取る利息を割り引いた額を本体に対する割合としたものです。これは米国政府が発行する10年債の将来の利益を表すものであり、これが高ければ高いほど、将来の利益が高いと予想され、低ければ低いと予想されます。
利回りが高い状況は、アメリカ経済が好景気になり、インフレリスクが存在するために投資家がそれ以上のリターンを求める場合に発生します。その一方で、利回りが低い状態は通常、経済危機やリセッションに該当します。経済不況期には多くの投資家がその安全性から米国債に資金を移し、需要の増加が利回りを抑えることにつながります。
アメリカ10年債利回りは、経済指標としての役割から、全世界で最も注目される金融データの一つです。特に、連邦準備制度理事会（FED）の金融政策や金利動向を考える際、必要不可欠な要素となります。
US10Yの変動が及ぼす金融商品の影響
US10Yの変化は、米国債、株式、不動産投資信託（REIT）、金などの各種資産価格に直接的な影響を及ぼします。
まずアメリカ国債について。US10Yが高まると、新たに発行される債券の利回りが高くなり、これが古い債券の価格を下げます。つまり、米国債価格と利回りは反対方向に動くのです。
次に株式市場です。US10Yの上昇は、企業の資金調達コストの増大を意味します。これにより企業の業績が悪化し、その結果、株価が下落する可能性があります。また、米国債利回りの上昇は、リスクフリーな投資としての魅力を高め、投資家が株式から債券に資産をシフトする可能性もあります。
REITについても、US10Yの上昇は借入コストを増加させ、利益を圧迫します。その結果、REITの配当利回りが下がり、価格も下落する可能性があります。
最後に金ですが、これは伝統的にインフレヘッジや金利上昇の安全な避難先と見なされています。しかし、金利が上昇すると、金の所有コストが高まり、金価格を圧迫することがあります。
以上のように、US10Yの動きは、多くの異なる資産クラスのパフォーマンスに影響を与え、投資家の戦略を変える可能性があります。そのため、金利の動向を理解することは、賢明な投資判断を下すために必要不可欠です。
2023年、アメリカ10年債利回りが及ぼすマーケットへの衝撃
さて、2023年8月の直近の US10Y に関連する動きを見てみましょう。
まず始めに、格付け会社フィッチが米国債の格付けを「トリプルA」から「ダブルAプラス」に引き下げたという大ニュースです。引き下げの理由として、過去に起きた議会襲撃事件や債務上限交渉などによる政治状況の不安定さが挙げられました。
その結果、長期金利の上昇が続き、一時は2022年11月以来9カ月ぶりの4.2%に迫るほどとなりました。米国債の格下げと、それにより想定される需給バランスの悪化がこの状況を引き起こしたと言えるでしょう。
米国債10年利回りも、一日で0.1%超上昇しています。また、30年債利回りが一時4.3%まで上昇し、9カ月ぶりの高さとなりました。対する2年債利回りは4.9%前後と前日比で横ばい圏内の動きを見せたため、特に満期の長い国債利回りの上昇が目立ちました。
この一連の動きに対して、ウォーレン・バフェット氏をはじめとする著名投資家達は心配する必要はないとの見解を示しています。事実、バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイは先週と今週に米国債をそれぞれ100億ドルずつ購入した、と発表しています。
これらの動きから見えてくる2023年の金融市場は、米国債10年利回りの影響によって大きな変動が予想されます。しかしながら、バフェット氏を含む有力な市場参加者たちはこの動きに対しても冷静な対応を見せており、これを焦点とした対論が今後ますます盛り上がることが予想されます。
参考:
米長期金利9カ月ぶり高水準 国債格下げ・増発余波なお | 日経新聞
なぜアメリカ10年債利回りを理解する必要があるか
ここまでで米国債10年利回りの性質や、直近の動きに関して見てきました。
アメリカ10年債利回りの動きを理解することで具体的に何を得られるのでしょうか。
それは投資戦略の策定、リスク管理、資産配分の最適化、そして将来のマーケット動向への対策などの重要な投資決定をより具体的に導くことができるようになるという点です。
要するに、アメリカ10債年利回りは金融市場全体を理解し、予測するための重要なツールであり、その理解を深めることで、投資家はより賢明な投資決定を下すことが可能となります。
改訂版 金利を見れば投資はうまくいく | Amazon によれば、金利とは「金融市場の炭鉱のカナリア」です。
金利の中でもアメリカ経済の変化に敏感に反応するアメリカ10年債利回りを常に注視しておけば、市場の転換を察知し、投資に役立てることができるでしょう。