[銘柄分析] ハーシー: バフェットの投資哲学から見るアメリカのチョコレート帝国の財務分析と投資価値 | 米国株投資について語る
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[銘柄分析] ハーシー: バフェットの投資哲学から見るアメリカのチョコレート帝国の財務分析と投資価値

作成日: 2023年08月26日

更新日: 2024年09月07日

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ハーシー: アメリカのチョコレート王国企業の銘柄分析の前に

ハーシーは、1894年にミルトン・ハーシーによって創業されたアメリカの代表的なチョコレートメーカーです。

ハーシー社が手がける商品は、ハーシーズ・キス、ハーシーズ・バー、リーシーズ・ピーナッツバターカップ、キットカットなど、世界中で愛されているチョコレート製品が数多くあります。

ハーシーは、贅沢な味わいと質の高さで知られるチョコレート製品を生産してきました。

その一方で、ハーシーは企業としても革新的な取り組みを推進してきました。

例えば、ハーシーはエシカルなサプライチェーンマネジメントを重視し、カカオの調達においても持続可能性と公正さを確保するための取り組みを行っています。

また、ハーシーは新商品開発にも力を入れており、消費者のニーズを取り入れた製品を次々と市場に送り出しています。

近年では、ヘルシー志向の消費者に対応するため、砂糖を控えめにした製品や、プラントベースの製品の開発も進めています。

ハーシーは、その創業以来、アメリカのチョコレート市場をリードしてきました。

その背後には、ハーシーが持つ強固なブランド力と、アメリカ市場における深い浸透力があります。

その結果、ハーシーはアメリカ市場だけでなく、世界中で愛されるチョコレートブランドとなりました。

ハーシーの成功は、その製品の品質と革新性、そして強固なブランド力によるものです。

これらはすべて、ハーシーが持つ独自の企業文化と、ハーシーが追求するビジョンに根ざしています。

それは、「クオリティ、イノベーション、そして持続可能性」- これがハーシーのビジネスの核心であり、ハーシーがこれまでに築き上げてきた価値を象徴しています。

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ハーシーの「経済的な堀」: アメリカ市場における強固な地位とブランド力

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ウォーレンバフェットが投資において最も重視する概念の一つが、「経済的な堀」です。

これは、企業がその競争力を維持し、競争者から市場シェアを奪われることなく、長期的に利益を生み出し続ける能力を指します。

ハーシーは、その強固なブランド力と、アメリカ市場における深い浸透力により、この「経済的な堀」を確保しています。

まず、ブランド力について見てみましょう。ハーシーは、その創業以来、一貫して高品質なチョコレート製品を提供し続けてきました。

その結果、ハーシーのブランドは「品質」、「信頼性」、「安心」を象徴するものとなりました。

これは、消費者がハーシーの商品を選ぶ最大の理由の一つであり、新規競争者が簡単には模倣できない強固なブランド力をハーシーに与えています。

また、ハーシーの商品は、アメリカ国内における広範な流通網を通じて、全国の消費者に届けられています。

スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアなど、あらゆる販売チャネルでハーシーの商品を見つけることができます。

これにより、ハーシーは高い市場浸透力を維持し、消費者にとって手に入れやすい商品を提供し続けることができます。

さらに、ハーシーは新商品開発にも力を入れており、消費者のニーズを的確に捉えた製品を市場に送り出しています。

近年では、ヘルシー志向の消費者に対応するため、砂糖を控えめにした製品や、プラントベースの製品の開発も進めています。

これらの取り組みは、ハーシーが市場の変化に対応し、常に消費者のニーズを満たす商品を提供し続けることで、その競争力を維持していることを示しています。

また、ハーシーはエシカルなサプライチェーンマネジメントを重視し、カカオの調達においても持続可能性と公正さを確保するための取り組みを行っています。

これにより、ハーシーは消費者からの信頼を獲得し、そのブランド価値を高めることができています。

このように、ハーシーは強固なブランド力、広範な流通網、新商品開発の能力、そしてエシカルなビジネスモデルによって、「経済的な堀」を築き上げています。

これらは、ハーシーが長期的な競争力を維持し、持続的な利益を生み出し続ける基盤となっています。

これらの要素は、ハーシーがアメリカ市場における強固な地位を確立し、その地位を維持し続けることができる理由を示しています。

そして、これらの要素はすべて、ハーシーが「経済的な堀」を持つ企業であることを証明しています。

この「経済的な堀」が、ウォーレンバフェットが投資の対象とする企業を選ぶ際に重視する要素の一つであり、ハーシーがバフェットの投資哲学に適合する企業であることを示しています。

ハーシーの財務分析: 創業以来の成長性と現在の株価評価

以下では、ハーシーの2022年の年間報告書からデータを引用しています。

https://hershey.gcs-web.com/static-files/2227ed0e-784d-488e-b30e-5ae5e5a4fdcc

ハーシーの2023年の財務健全性

ウォーレン・バフェットの投資哲学の中心には、財務分析の重要性があります。

2022年末と2021年末のハーシーの貸借対照表を比較してみましょう。

項目 2022年(億ドル) 2021年(億ドル)
資産
流動資産
現金及び現金に相当する資産 4.64 3.29
売掛金 7.11 6.71
流動資産合計 26.20 22.46
固定資産 27.70 25.86
営業権 26.07 26.33
その他の無形固定資産 19.66 20.38
その他の非流動資産 9.45 8.68
繰延税金 0.40 0.41
資産合計 109.49 104.12
負債及び自己資本
流動負債
未払金 9.71 6.92
未払費用 8.33 8.56
未払所得税 0.07 0.03
短期借入金 6.94 9.39
長期借入金の現行部分 7.54 0.03
流動負債合計 32.57 24.93
長期借入金 33.44 40.87
その他の長期負債 7.20 7.87
繰延税金 3.28 2.88
負債合計 76.49 76.55
株主資本
普通株 1.63 1.61
B類普通株 0.58 0.61
追加出資金 12.97 12.60
利益剰余金 35.90 27.20
自己株式 -15.56 -11.95
その他の包括的損失累計額 -2.52 -2.49
自己資本合計 32.99 27.57
負債及び自己資本合計 109.49 104.12

この表を見ると、その財務状態は堅調であることがわかります。現金及び現金同等物は前年比で増加し、4億ドル強に達しています。

また、営業資産(売掛金と在庫)も増加しており、これはハーシーの売上高の増加を反映しています。

一方、負債面では、流動負債が全体的に増加していますが、これは短期的な借入れによるものであり、長期的な負債は減少しています。これはハーシーが自社の資本構造を適切に管理し、負債の負担を軽減していることを示しています。

財務安定性の観点から流動負債を考察してみましょう。流動負債は30億ドルほどあるのに対し、現金または現金相当の資産は4億ドルほどしかありませんが、フリーキャッシュフローが16億ドルほどあるので、短期的な負債返済能力にはあまり問題なさそうです。

また、ハーシーの純資産も増加しており、これはハーシーが利益を積み上げ、自社の財務基盤を強化していることを示しています。特に、保有利益が大幅に増加しており、これはハーシーが安定した利益を生み出し、それを再投資する能力を持っていることを示しています。

さて、ハーシーの財務健全性(安全性)をキャッシュと負債の関係から考察してみましたが、ハーシーの事業が創出するキャッシュについては考えませんでした。資金繰りを考えるためには、事業が創出するキャッシュを考慮することが重要です。事業が創出するキャッシュを考えるためにはどうすればよいのでしょうか。

ハーシーのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

事業がキャッシュを創出する能力を考えるためには、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)が目安になります。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル (CCC)とは、原材料や仕入に現金を投じてから売上になり最後にキャッシュに変換されるまでの日数の目安です。CCCが低いほどキャッシュを創出する能力が高く、資金繰りが安定しやすいことを示します。

CCCは以下の式で計算されます。

CCC = 在庫回転日数 + 売上債権回転日数 - 仕入債務回転日数

https://hershey.gcs-web.com/static-files/2227ed0e-784d-488e-b30e-5ae5e5a4fdcc にあるB/SとP/Lから、これらのデータを計算してみました。

在庫回転日数 売上債権回転日数 仕入債務回転日数
12/2022 72日 25日 59日

これらから、2022年12月のハーシーのCCCは38日となります。Appleのように、キャッシュを創出する能力が高い企業はCCCがマイナスになりますが、ハーシーのキャッシュ創出能力は若干劣るようです。

アップルが「最強の資金繰り」を維持できる理由

キャッシュ創出能力が低いと資金繰りが難しくなり、資金繰りが難しいということは経営も難しくなります。この点には留意しておくべきでしょう。

ハーシーの設備投資

競争が激しいセグメントの製造業では、競争力を維持するため・あるいは事業を継続するためだけに多額の設備投資 (Capital Expenditures) が必要なことがあります。

設備投資が多ければ多いほど、純利益やフリーキャッシュフローが減ってしまいますから、継続して設備投資が多すぎる企業は要注意です。

Warren Buffett and the Interpretation of Financial Statementsによれば、設備投資が純利益に占める割合が50%以下であればよいです。

2022年のハーシーの設備投資は5億ドルほど、純利益は16億ドルほどですから、設備投資が純利益に占める割合はわずか30%ほどです。

ハーシーは非常に少ない設備投資しか必要としないので、そのぶん多くの純利益が得られ、株主に還元できるというわけです。

ハーシーの内部留保金の伸び

また、バフェット的な考察をするならば、とくに内部留保金(Retained earnings)の伸びに注目するべきでしょう。内部留保金は、以下の用途に使うことができます。

  • 将来の売上を伸ばすための事業投資
  • 負債の返済
  • 株主への配当
  • 自社株買い

これらはいずれも株主の利益になる行動です。着実に内部留保金が増やしている企業は、株主へのリターンをさらに増やすことができるのです。

ハーシーの内部留保金はどうでしょうか。

ハーシー年次内部留保金(億ドル)
2022年 35.9億
2021年 27.2億
2020年 19.29億
2019年 12.9億

ここ3年、内部留保金を増やしています。2023年の配当利回りは2.19%とそこそこですが、将来の配当増も期待できると思います。

https://www.macrotrends.net/stocks/charts/HSY/hershey/retained-earnings-accumulated-deficit

ハーシーの事業の収益性: 粗利率, 販売管理費率, ROE

ハーシーは2010年から2022年の粗利率(Gross margin)を常に40%以上にキープしています。

日付 粗利率
2022-12-31 43.18%
2021-12-31 45.12%
2020-12-31 45.43%
2019-12-31 45.37%
2018-12-31 45.87%
2017-12-31 45.97%
2016-12-31 42.59%
2015-12-31 45.78%
2014-12-31 44.93%
2013-12-31 45.91%
2012-12-31 43.05%
2011-12-31 41.63%
2010-12-31 42.59%

https://www.macrotrends.net/stocks/charts/HSY/hershey/gross-margin

バフェット流の財務分析をするなら、企業の粗利率が40%以上あれば競争上の優位性があるので、ハーシーは過去10年以上も競争力を維持しているということになります。

Warren Buffett and the Interpretation of Financial Statements

さらにハーシーの2022年の年間レポートによれば、2020年から2022年まで販売管理費率が20%程度と、非常に素晴らしい数値です。

これだけ事業の収益性がよいと、おのずとROEが高くなります。

実際、ROEは55%と驚異的な数値です。

https://finance.yahoo.com/quote/HSY/key-statistics?p=HSY

ハーシーの内在価値: DCF法で計算してみる

ここまで、ハーシーの財務状態や事業収益性を見てきて、とくに事業収益性が素晴らしかったです。

ぜひ買っておきたい株の1つですが、いまの株価が「買い」なのか判断するため、ハーシーの内在価値(intrinsic value)をDCF法で計算してみましょう。

ここでは、内在価値を「今後10年間にハーシーが得るフリーキャッシュフローの合計と、10年後の事業の残存価値」とします。ただし割引率を考慮します。

2013年から2022年にハーシーが得たフリーキャッシュフローの年平均成長率(CAGR)は7.7%ほどです。

割引率はハーシーの加重平均資本コストとして5.7%と仮定してみます。

すると、内在価値は390億ドルほどになります。これを株価に直すと188ドルほどです。

2023年8月26日現在のハーシーの株価は218ドルほどですから、現在の株価はやや過剰評価されていると言えるかもしれません。

いがらし(筆者)は、バフェットがいうところの安全余裕度(margin of safety)を15%取り、1株あたり162ドルほどになったら大量に買おうかと思います。

そこまで下がるかわかりませんが、現在のアメリカの高い長期金利がアメリカ経済にダメージを与え続けるならば、ハーシーの株価もある程度下がると思っています。

ウォーレンバフェットの投資視点から見たハーシー: 銘柄分析の結論

ウォーレン・バフェットが投資対象として選ぶ企業には、いくつかの特徴があります。その中でも特に重要なのが、「経済的な堀」を持つこと、健全な財務状態であること、そして長期的に利益を生み出し続ける能力を持つことです。

ハーシーは、その強固なブランド力とアメリカ市場における深い浸透力により、強固な「経済的な堀」を持っています。また、ハーシーの財務状態は健全であり、安定した利益を生み出し続けています。これらは、ハーシーがウォーレン・バフェットの投資哲学に適合する企業であることを示しています。

しかし、それがハーシーが現在の株価で魅力的な投資対象であるということを必ずしも意味するわけではありません。その株価がハーシーの事業価値を適切に反映しているかどうかは、ハーシーのフリーキャッシュフローの伸びや、その競争力、市場環境などを考慮に入れて評価する必要があります。

しかし、ハーシーの強固な「経済的な堀」、健全な財務状態、そして長期的な成長性を考慮すると、ハーシーは長期的な視点から見て、魅力的な投資対象であると言えるでしょう。この記事では、ウォーレン・バフェットの投資哲学に基づき、ハーシーの投資価値を評価しました。

ただし、ハーシーフリーキャッシュフローの伸びからすると、ハーシーの現在の株価はやや過剰評価されていると言えるかもしれません。 ハーシーは素晴らしい投資対象であるものの、現在の株価は割安とは言いづらく、買うのはもう少し待ってみるのも手だと思います。

また、ハーシーのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を計算してみると、もっともCCCが低い部類の企業と比べるとCCCが高いことが気になりました。内部留保金の多寡にもよりますが、将来資金繰りに苦慮するかもしれないと感じました。

バフェットは、「適正な会社を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい会社を適正な価格で買うほうがはるかに良い」(It's far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price.)と言っています。

我々もこの至言を忘れないようにしたいものです。

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