作成日: 2025年01月18日
更新日: 2025年01月18日
ここ最近、いがらしはポートフォリオの日本株の割合を増やし、商社株に投資しています。 その中でも三菱商事に多額の投資を行っています。
上の画像に示すように、2024年7月以降の三菱商事の株価の変動は著しく、大きな下げトレンドが続いているように見えます。 このような銘柄に投資するのは「落ちるナイフを掴む」ような行為かもしれませんが、バリュー投資家をやる以上はボラティリティを歓迎するものであると心得、いがらしは強気に三菱商事を買い続けています。
この記事では、なぜバリュー投資家のいがらしが三菱商事を買い続けるのか説明します。
三菱商事は、三菱グループの御三家の一つであり、100年以上の歴史を持つ大手総合商社です。 会社全体のROAは4.6%, ROEは10.4%、純利益率6.6%と、日本企業としてはある程度優れた水準です。
2025年1月現在、以下の8事業を展開しています。 2024年3月期の純利益, 総資産, ROAも示します。
ROAが一番優れているのが地球環境エネルギーです。液化天然ガス(LNG)事業やシェールガス業、石油関連事業を主力とし、エネルギー資源の開発・製造・販売を手掛けています。 地球環境エネルギー事業に限らず、会社全体で幅広い顧客・パートナー企業とのネットワークを活用し、世界中に展開する事業ポートフォリオを構築しています。 これが三菱商事の「経済的な堀」であり、競合との差別化を図っていると言えます。 (とはいえ、競合である伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅も世界的なネットワークを持っているのは同様です)
世界中で事業を展開しているため、地政学的なリスクの存在感が大きいです。実際、統合報告書では5つの事業が地政学リスクを挙げています。 地政学的なリスクがあまり関連しないのは内需が主なS.L.C事業くらいではないでしょうか。 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/integrated-report/pdf/portal/all.pdf
LNG生産国や産油国で国際的な政治上の問題が発生し、エネルギー資源の流通になんらかの障害が起きると損失は大きいでしょう。
投資家からすると、これだけ幅広い事業を展開していると事業内容を理解するのも難しくなりますし、競争に晒される事業も多いため、投資のハードルは高くなるかもしれませんね。
2024年第2四半期の決算を分析します。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/earnings/pdf/202411j.pdf
自己資本比率は43.9%、その中に自己株式が5700億円ほどあるのは自社株買いを行っている証拠です。 資本のうち、社債及び借入金が13%(1.5兆円)を占めます。 資産を見てみると、現金及び現金同等物が1.2兆円あります。 借入により少しレバレッジをかけていますが、まだまだ余裕があります。 事業内容から察する通り、固定資産は多く、資産のうち固定資産が約57%を占めます。
CCCはどうでしょうか?CCCとはCash Conversion Cycleの略で、売上債権、在庫、売上債務の平均回転日数を足し合わせたものです。 以下のように計算してみました。
CCC = 159 + 21 - 32 = 148日となるため、あまり良くはない数値です。 特に売上債権回転日数が昨年より長くなっているため、売掛金の回収が遅れる傾向が出始めているのかもしれません。 CCCが長いと資金繰りに影響を及ぼすので注意が必要です。
三菱商事の2024年3月期のフリーキャッシュフローは1.1兆円、2025年1月19日時点での時価総額は9.87兆円なので、時価総額の11%ものフリーキャッシュフローを創出していることになります。これは非常に高い水準で、現在の三菱商事の株価は割安であることを示唆しています。
DCF法でも株価を評価してみましょう。以下の条件のもとDCF法で適正価格を計算してみます。
これらの条件のもと、DCF法で適正価格を計算すると24兆円となりました。よって現在の株価で買うと十分な安全域をとることができるため、三菱商事の株価が下落していても、事業の良好さもあり、いがらしは三菱商事への投資は安全であると考えています。
利益剰余金と株価の関係を調べておくと、利益剰余金が1円増えると時価総額が何円上がったのかを知ることができます。バフェットのいうOne dollar premiseは、利益剰余金1ドルあたりに時価総額が1ドル上がっていないといけないというものです。
三菱商事の場合、2018年3月から2024年3月にかけて利益剰余金が2.9兆円増加し、時価総額は9.7兆円増加しているので、利益剰余金1円あたり時価総額が3.3円上がっています。つまり、今後も利益剰余金の増加につれて時価総額が増加すると考えられます。
三菱商事の直近の株価は下落していますが、事業内容や財務状況は優れています。 また、依然として割安のままであることから、下落しようが、上昇しようが、いがらしは三菱商事への投資を継続していきます。